紀の国の庭園 ⑧光臺院庭園
高野山には52の宿坊があり、庭園が売り(特色)の宿坊も少なくありません。
とりわけ、小堀遠州(こぼりえんしゅう、江戸初期)や重森三玲(しげもりみれい、昭和)作の庭園はいずれも素晴らしいのですが、殆どの宿坊は拝観を宿泊者に限っています。
そんな中、宿泊しなくても、前日の午前中までに予約すれば拝観させて頂けるのが光臺院です(こうだいいん、拝観志納、13~16時の間のみ)。
当日は13時からの予約でしたが、壇上伽藍を見終わっても、まだ午前10時頃……(平成28年5月上旬)。
だいぶ間があるので、高野山駅への道沿いに点在する女人堂、蓮華定院、徳川家霊台を訪ねます。
女人堂は、高野山が女人禁制だった頃の名残(唯一現存する不動坂口の女人堂)。
明治5年までの約千年間、女性は女人堂から先に進むことは許されませんでした。
蓮華定院は、高野山における真田家の菩提寺。
至るところに六文銭が……。
この寺も宿泊者のみが拝観を許されますが、真田家墓所(真田信之・信政の供養塔)については、寺務所に断りを入れれば拝観可能です。
「真田丸」では、大泉洋さんが極めて常識人の真田信之(信幸)を好演されていますね。
徳川家霊台(重文、拝観料200円)は、いわば高野山東照宮。
徳川家康と秀忠の霊廟が並んでいます。内部の拝観は、特別な場合にのみ許されます。
それでも時間が余ったので、千手院橋の喫茶店でしばし休憩……。
いよいよ光臺院へ。
お若いご住職が自ら案内してくれました。
まずは、ご本尊の阿弥陀三尊像(快慶作・国重文)を拝観。
金色の美しい仏様です。光背も360℃光り輝くばかりに美しく、快慶晩年の最高傑作と云われています(ご住職は、国宝でもおかしくない、とおっしゃっていました。まったく同感です。)。
続いて、重森三玲作の庭園へ。
こちらも美しい……。八葉蓮華をかたどった築山と軒内の洲浜が、特徴的かつ印象的です。
さて、光臺院には、もう一つ見ておかねばならない場所があります。ご住職の案内で裏山へ……。
金剛峯寺(当時は青巌寺)「柳の間」で自刃した関白・豊臣秀次の胴塚です。
関白の墓にしては小さな宝篋印塔が一基……。
殉死した家臣達の墓もなく、寂しげでした。
しかし、何故、ここ光臺院に、関白秀次の胴体が葬られたのでしょうか?
(※首は京都へ送られています。)
ご住職のお話では、奥之院に葬ることは許されなかった。しかし、光臺院は金剛峯寺とは(同じ真言宗でも派の)異なる御室仁和寺系の寺だったため、ここに葬られた、とのことでした。
「真田丸」では、新納慎也さんが人の良過ぎる秀次を演じています。どのような最期を迎えるのか、今から楽しみです。
後ろ髪を引かれる思いで、光臺院を後にしました。
本日3度目の千手院橋で軽い昼食を済ませ、荷物を回収し、本日の宿坊「福智院」へ向かいます。
〔⑨福智院 重森三玲の庭園群 へ続きます〕